ウェブマガジン CM Funコラム

女の胸の谷間は、
いつのまにか消える。

あゆみ


唐突だけど、男性に問いたい。
あなたは「女性のブラ」というものを、
何だと思っているんでしょうか?

…もちろん、趣味嗜好じゃなくて役割のお話です。

「胸を覆う布」または
「質量のあるものを収める布」程度だと思ってませんか?
いいえ、きっと思ってますね!
(なぜちょっとキレ気味なのか…)

だとしたらそれは違います。
ブラとは「胸についた脂肪を、世の中の人の(というか自分の)
思う“きれいな胸のかたち”に整えるための装置」なんです。
そう、胸を女性の胸らしく、美しく形づくるものです。

ブラがなければ、女性の胸は「バスト」たりえないのです。
…特に、谷間に関しては!

(質量が豊富な方はその限りではないでしょうが…)

さらに悲しいかな、胸は脂肪でできています。
脂肪というのは、水に匹敵するくらい自在に移動する。
なのでブラの中に美しく整えておさめた脂肪も、
歩いて腕を動かして立って座って…などしていれば
するりと逃げていきます。
私のようにいまいち質量が足りない場合はなおさらです。

朝の着替えでせっかく中央に寄せて集めたものが、
苦労してつくりあげたささやかな谷間が、あっさり逃げていく。
これはかなり悲しく、またむずむずと気持ち悪いものです。
(ブラって上にあがってきがちですからね)

そこで私は日々数回、定期的に、
そしてほとんど無意識のうちに、誰も見ていない瞬間を見はからって
「服に手を突っ込んでブラの中に肉を戻す」作業をしてます。

ほぼ、女の本能だと思います。

(完全に余談ですが、男友達がやけにモジモジして挙動不審なので
「どうしたの?」と尋ねたら「ちょっとポジションが…おかしくて」
と返された経験が複数回あります。あの座りの悪さを想像して頂くと、
男性のみなさんには私のこの作業の必要性が分かると思います)

そうなんです。
胸は動くのです。
そして谷間は、砂上の楼閣なのです。
(がっくりと膝を折る)

というわけなので、私はこのワコールのCMを観た時、
「よくぞそこを拾ってくれた…!」とTVの前でうなりました。

ワコール リボンブラ CM

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HA
面白い!
好き!
感動!
ずれないブラ。素晴らしい。
「朝の谷間、ながもち」。頼もしい。

しかもこの歌が秀逸です。

 腕あげてねじりましょ♪
 そのとき胸にご注目
 バストにピッタリくっついて
 ほらほら谷間がくずれません
 これがうわさのリボンブラ
 これがうわさのリボンブラ

いっぺんで覚えられる歌詞とメロディー。
ブラを着用している者ならばついやってみたくなる動き。
(何でも「腕あげてねじる」は、ブラを試着した際に
フィットしているかどうかの確認のため、お客さんに
やってもらう動きがモチーフになっているそうで…なるほどリアル)

さらにそれが
「今のブラだとほら、谷間くずれるでしょ?
 安心して下さい、(ウチのは)くずれませんよ」
という宣戦布告にもなってますね。

モデルさんはなぜかすごくテンション低いし(笑)
ダンスもやる気があるんだかないんだか微妙で、妙に記憶に残ります。
このCMを「可愛い」や「セクシー」に振らなかった
ワコールさんの心意気を私は称えたい。

お肉がずれること、谷間が消失することは
女たちの楽屋裏の、切実な悩み。
それをキラキラでごまかすことなく
「異性の目」を上に盛ることもなく、
フラットで飾らない「女同士の目線」というか
「実利優先」な空気感をうまく出してると思うのです。

(だけど画面全体の雰囲気や、製品自体はとても可愛い、
 という仕上がりもいいなと思います)

ワコールさんにはこれからも
「よくぞそこに目をつけてくれました…!」
という機能と、女同士の目線に基づいたCMを
世に出して欲しいなと思います。

とりあえず今から、リボンブラ、試着してくる。

(執筆者:近藤あゆみ)

執筆者:

あゆみ

博報堂コピーライターからなぜかダンサーに転身。その後 (株)ネットプライス創業時からライター&クリエイティブディ レクターとしてEコマ―スに携わる。日本初の共同購入「ギャ ザリング」やブランド買い取り「ブランディア」の名づけ親。 「広野ゆうな」のペンネームでメルマガやブログを15年以上 書き続け、一部にコアなファンを持つ。現在はフリーでライ ティング、ネーミング、コピー、コラム、振付など手がける。

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