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言わないこと。でも、にじむこと。
〜予告CMにみる「シン・ゴジラ」〜

あゆみ

もはや今さらつぶやくのも恥ずかしいレベルですが、

「シン・ゴジラ」がヤバいですね。 

そしてもはや日本中の皆が語り尽くしつつあるので
この映画についての感想を述べるのはやめようと思いますが、

わたしこれまでに3回観まして。  
このあとさらに2回観ることが決まっています。 

「マッドマックス 怒りのデスロード」は映画館で12回観たから
まだまだその域ではないんですが(その域が基準かよ)、 
まさかこれまで全く興味のなかった「特撮怪獣映画」に
ここまでハマるとは思いませんでした。 
(まあ「シン・ゴジラ」はそもそもそのジャンルから逸脱してますよね) 

というわけで、ありとあらゆる人々がありとあらゆる角度で
この映画について語り、分析しているので、私はこのサイトで
「シン・ゴジラのCM」についてだけ、書こうと思います。 

まだ私が一切の興味も関心もなかった時期、
ネットで散見されたのはこんな意見でした。 
「庵野監督でゴジラ!?絶対失敗だろ」  
エヴァを全く通っていない上に、庵野監督といえば
「安野モヨコの旦那さん」という認識しかない私には、
その理由は分かりませんでした。 

そして公開直前に予告を目にしたネットのみんながさらに言いました。 
「予告、地味じゃね…?盛り上がりに欠けない?」  
これはどうやら、「人と会議のシーンが多すぎて躍動感がなく、
肝心のゴジラの暴れっぷりが分からない」ということのようでした。 

それがこの予告。

『シン・ゴジラ』予告 (詳細)

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    • シン・ゴジラ
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HA
面白い!
好き!
感動!
何がすごいって、1分半の間にセリフはひとつもありません。  
それどころか冒頭のゴジラの咆哮以外は、街が崩れる音も、
ミサイルの轟音も、テロップも、何もありません。  
90秒という長さで、しかもなるべく動員を増やしたい映画、
なのにこの情報量のなさ。東宝さん、かなりの蛮勇です。 

そして15秒のTVCM。

東宝 『シン・ゴジラ』TVCM① 15秒 (詳細)

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HA
面白い!
好き!
感動!
こちらはもっと何も言ってないぞ…!  
下から見上げた(車で逃げる人間目線)ゴジラ。 
全貌すらはっきりしない。「なんかすげーの近所に来た!」ですね。 

「どういう映画になるんだ…?」という期待感はあれど、
もとから興味を持っていた人以外が、これで「よし行こう」と
なるとは思えないCMです。 

こちらは第二弾のTVCM。 
私はこれを公開後(まだ観に行ってない時)に
観た記憶があります。

東宝 『シン・ゴジラ』TVCM② 15秒 (詳細)

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HA
面白い!
好き!
感動!
こちらはだいぶ「映画のCM」ぽくなりました。 
登場人物のセリフがあります。 
(といっても主役の長谷川博己だけですが) 
コピーは「日本に、希望はあるのか。」 

私これを観た時、
「ああ、ありがちなヒューマンドラマ展開するんだろうな」と思いました。 
やはり「人」に焦点があたっていたからです。 
有名なアーティストの歌う「泣ける」主題歌があるんだろうな、と思いました。 


でもね  
でもですね 

いちど観に行ったが最後、
これらのCMは「大事なことを完璧に隠していた」ということ、
同時に「映画の内容そのまま」だったこと、に気づいちゃうんです。

映画があまりに面白くて、公開前に
「庵野じゃだめだ」と言った人たちが口々に
「庵野まじゴメン」と土下座の勢いで言っていました。 
私は庵野監督をほぼ知りませんが、それでも「ゴメン」て思いました。 
私たちは結局、この映画について事前には何ひとつ分かってなかったんです。

映画館で初めて驚愕した「え、ゴジラこんなふうなの!??」の数々。 

予告とCMでは、そのネタバレを頑固なまでに隠していました。 
そりゃ、華々しいシーンが入ってないはずですよ。 
あんな姿、こんなシーン…入れられないもん! 

そして「地味」と思ったゆえんの「人と会議のシーンばっか」という部分。 
これは意図して編集したわけではなく、本当に映画そのものだったんですね。 

「シン・ゴジラ」は「怪獣映画」ではなく
「日本が危機にどう対処するか映画」でした。 
実際の映画も2/3くらいは会議シーンと対話シーンで占められてます。 

そして私が想像していたような「ヒューマンドラマ」はなかった。 
いや実際には人間のドラマばかりだったんですが、
泣いたり、絶叫したり、激昂したり、キスしたり、必ず生きて帰ると言ったり、
そこにちょうどいい具合に泣ける音楽が鳴ったりは、しませんでした。 

例えば2014年公開のハリウッド版のゴ…いや「ガッズィーラ」の
日本公開時のCMはこれです。

東宝 「GODZILLA ゴジラ」TVCM 15秒 (詳細)

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HA
面白い!
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感動!
これが悪いということではありませんが、
家族の愛、「誰々を守る」、こういうのがヒューマンドラマだと
思ってたので、「全然なかったなあ…それ」と思いました。 

「シン・ゴジラ」は徹底して登場人物のプライベートを描かなかった。 
出てくるのは「公の場にいて肩書きのある“はたらく人間”」のみでした。 
だからこそ、CMでは皆が感情的な部分を見せず、はたらいている姿、
集まって何かをしている姿だけが流れたんです。 

国家に属するはたらく人々が立場の違いを超えて総力戦で立ち向かう姿。 
それに対し、敵は絶望的なまでに巨大で、揺るぎなく、感情も狙いもない。 
ましてやたった1人の個人から見上げるそれは、全貌すら分からない、 
もはや生き物ですらない、突如日常を破壊する「絶望」そのものである。 

そんな対比が、予告にもCMにもよく出ていると思うのです。 
(動画をもう一度観てみて〜) 

「シンゴジおもしれーーーー!」というモードになって
ありとあらゆる情報や感想を読みまくっていた時、
「庵野監督は予告であれこれ言わない(漏らさない)ことにこだわった」 
という話も聞きました。宣伝部との攻防もかなりあったようです。 

CMでは肝心のところは絶対に漏らさない。 
だけど、作品のトーンはそのまま滲ませる。 
だから、来て、観て判断してくれ。 

庵野監督のそんな声が聞こえてくるようですよ。 


「私は好きにした。  
君らも好きにしろ。」 

作中の牧教授の言葉は、
CMにも、反映していたんですね。

執筆者:

あゆみ

博報堂コピーライターからなぜかダンサーに転身。その後 (株)ネットプライス創業時からライター&クリエイティブディ レクターとしてEコマ―スに携わる。日本初の共同購入「ギャ ザリング」やブランド買い取り「ブランディア」の名づけ親。 「広野ゆうな」のペンネームでメルマガやブログを15年以上 書き続け、一部にコアなファンを持つ。現在はフリーでライ ティング、ネーミング、コピー、コラム、振付など手がける。

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