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誰が為に「キレイ」は在る?

あゆみ

女はなぜお洒落をするのか。  
女はなぜキレイになりたいのか。 

こんな質問を街で老若男女にしてみたら、
きっと、さまざまな答えが返ってくるだろう。 


私が10〜20代の頃に買っていた女性誌には
ほぼ毎月、こんな特集があった。 
「オトコの辛口座談会『ボクらはこんなコが好き・ダメ』!」 

購買層に合わせ、高校生〜会社員のリアルな男性たちが
女性のタイプ(性格からファッションからメイクから
ベッドの所作に至るまで)について「いい悪い」を語る。 

それ以外のファッションページであっても、
女性誌をめくればそこかしこから
ひとつのハッキリしたメッセージが浮かび上がっていた。 

「男性に好感を持たれ、愛される(モテる)ために、
こういうお洒落をし、キレイの努力をしなさいね」 

そう、冒頭の問いに対するメディアの答えがそれなんだと思う。 

(とんと女性誌を読まなくなったから分からないけど、
今はどうなんだろう) 


「異性に嫌われないため、愛されるためにこうしなきゃ」
というプロパガンダは、強い。強いからこそ、時に脅しにもなる。 

メディアがこぞって発信するそれらのことばの中には
「あまり出過ぎると嫌われるから、でしゃばらずさりげなくね」
「異性ウケをよくしないと、あんたこの先(の人生)やばいよ」
みたいな警告が必ず含まれているのが、じんわり怖い。
(女性に限らず、男性に対するメッセージも同様) 

もちろん「モテてえ!」「ワーキャー言われてえ!」「恋人ほしー!」
という野心のもと、異性の好感と歓心を買うために自分を磨くのは
やりたい人がじゃんじゃんやればいいと思う。 

だけどその気がない人、向いてない人、他に優先させたいものが
ある人も沢山いる。だから「自分磨きは異性のため」→「それは
あくまでさりげなくすべし」という流れを当たり前にしないで欲しいなと。 

なぜこんな面倒くさいことを言ってるかというと、
すごく興味深い2つのCMを観たからだ。 

どちらも最近放映されている、20代からの女性のためのヘアケアのCM。

花王 アジエンス 「ほの色アカデミー」CM CM 徳井義実 早見あかり 15秒 (詳細)

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HA
面白い!
好き!
感動!
このCMは「ほの色アカデミー」というコンセプトの元につくられていて
特設サイトには「ほんのり色っぽくなるには」と書かれているんだけど
CMだけはなぜか「色っぽく→大人っぽく」に変わっている。 

もうひとつはこれ。

パンテーン・エクストラダメージケア トリートメントinコンディショナー PANTENE(パンテーン)[TVCM] 私らしく、GO FOR BEAUTIFUL! 菜々緒さん篇 30秒 (詳細)

  • 広告主
    • P&G
  • サービス
    • パンテーン・エクストラダメージケア トリートメントinコンディショナー
  • ビュアー
    • 1,478,871
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この2つ、宣伝文句としては同じことを言ってる。
服でもメイクでもないよ。自分を魅力的に見せるには
「美しい髪」が大切だよ、と。 

なのにどうだ、このメッセージの違いは。 

女の子たちの「メイクや服で演出するのは?」という意見に
「あからさまやん」「露骨やん」とツッコむ徳井教授。
「人にどう映るかを先に考えな」と言わんばかりで何だかイヤな感じだ…!
(徳井さんご本人に罪はないです) 
「そんなハッキリした自己主張じゃ好感度上がらないよ」と
イケメンに言わせるのは、ズルい。 
…よくないですか?メイクや服でガンガン演出しても。 

そらヘアケアのCMなんで服やメイクにいかないのは仕方ないけど、
「あからさまじゃない方法として、髪がベスト」っていう流れは
アジエンスとしてはあんまりにも消極的ではないだろうか。 

「魅力的な自分を演出すべきだけど、ハッキリした主張は嫌われるよ。
『そんなつもりじゃないのに滲み出ちゃった♪』くらいの自然さでね」 
…このパターンの提案、いい加減やめてほしいな。
アジア女性の凛とした美しさを謳ったブランドがなぜこうなったのかな。 


それに対してパンテーンのCMのいさぎよいこと。 

「私らしさって何?」というスタートがそもそも違うけど、
「それは服?メイク?」という過程は一緒。 
でもパンテーンではそれらを身からはいでゆき、
「脱ぎ捨てられるものは私らしさとは言えない」
「すべてを脱いで残るのが私」と続ける。

あまたの情報のもと、さまざまな装飾を自分の上に重ね、
結局何がいいのか分からなくて疲弊している女性には、
これはストレートに響くのではないだろうか。 

そして残るのは「この髪」であり「強さ」であり、
「他には何もいらない」と言い切る。 

女性の美を追求するメーカーの日本CMで
「強さ」ということばを前に出したの、
かなり画期的なことだと思う。 

そして菜々緒さんにはこのことばがよく似合う。
美しく堂々とした身体と、意思の強そうなまなざし。
たったひとりで立っているゆるぎなさ。 

そこには「異性にウケるため」「誰かに嫌われないため」
「皆からの好感度を手に入れるため」という注意書きがぶら下がってない。 
 
私が「私らしく」いたいから、キレイでいる。お洒落をする。
そしてそこから来る自信は「強さ」を生む。 

誰のためでもない、自分のためのその姿こそ、
最高に大人っぽく色っぽい。 


もちろんいろんな趣味嗜好、向いているやり方が世の中にはある。
「さりげなさを装う作戦」や「異性ウケ主義」も、全然あっていい。
再度言うけど、やりたい人はどんどんやればいい。 
 
だけどそれを「そうあるべき」な流れにしたくないと思うし、
特に若い女性は「そうあるべきなんだ」と思い込まないで欲しいなと思う。 

「強さ」よりも「主張しなさ」が吉、なんてこと、
これからの女性の生き方としては絶対にないよ。 

年を取ればとるほど分かる。
  
「自分らしさ」が最後には自分を救うし支えるし、毎日を楽しくする。
そののびのびした姿が、意外なところで「あの人は魅力的だな」と
思われたりするから、人生楽しいんだよ。 


「ゆえに問うなかれ  
 誰が為にキレイは在るや  
 其は 汝が為に在るなれば」

〜続・「誰が為にキレイは在る」〜

執筆者:

あゆみ

博報堂コピーライターからなぜかダンサーに転身。その後 (株)ネットプライス創業時からライター&クリエイティブディ レクターとしてEコマ―スに携わる。日本初の共同購入「ギャ ザリング」やブランド買い取り「ブランディア」の名づけ親。 「広野ゆうな」のペンネームでメルマガやブログを15年以上 書き続け、一部にコアなファンを持つ。現在はフリーでライ ティング、ネーミング、コピー、コラム、振付など手がける。

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