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もうそれ、いらないんです。
〜続・「誰が為にキレイは在る」〜

あゆみ

前回の私のコラムでは、2つのシャンプーのCMを例に「人に嫌われないためのキレイ」訴求と「自分のためのキレイ」訴求について書いた。

ありがたいことにネット上で複数の方がいいねやリツイートをして下さったのだけど、その女性たちが同じタイミングで話題にしていたのが「インテグレートのCM」だった。曰く「アジエンスと同じモヤモヤを感じる」と。 
教えて頂いた時には私はそのCMを知らなかったので早速観た。というわけで「誰が為にキレイは在る?」の続編的にこれを取り上げたい。

資生堂 小松菜奈、森星、夏帆共演「プロフィニッシュファンデーション」CM「がんばってる」を顔に出さない。"編(15秒) (詳細)

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「せっかく『頑張ってるな』の一言で喜んだ人をわざわざ落とすなんて」「頑張ってるだけじゃだめで、つらい顔もぶざまな顔も見せずにやることが大人の女だよって辛すぎでしょ」「そんなこと言われてまでキレイでいなきゃいけないのか!?」などの声が続出。

そして今回のインテグレートのコンセプトのスタート篇ともいえるロングver.の動画がこちら↓
(注:当該CMは削除されてしまいました…)

インテグレート 「生き方が、これからの顔になる」篇|資生堂

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こちらはよりいっそう、厳しい声が。 
「今の時代に『25過ぎたら女はツラい』みたいなこと言うのはあまりに時代錯誤」「誕生日にわざわざこんなアンハッピーな話するなんて」「女性を脅しているようにしかみえない」。


私はインテグレートというブランドが誕生した時をよく覚えている。 
百貨店のカウンターコスメではなく、ドラッグストアに置いてあるプチプラのコスメだけど、登場時のCMには何とあのアンジェリーナ・ジョリーを起用していたのだ。これは大人の女向きか!うおお格好いい〜〜とテンションが上がり、その瞬間に「私はインテグレートを使うぞ」と決めてしまった(笑) 
その後は真木よう子に代わり、さらに時代と共に強めの美人ではなく若い甘めの女の子がCMをするようになっていったけど、直近の「ラブリーに生きろ」というテーマまではずっと「自分がキレイになりたいから、楽しみたいからメイクをする」というコンセプトではあった。

ところが今回は、アジエンスの露骨さとまではいかないけど、「いい女、楽しそうな女」を見せるのではなく「世間の風当たりを考えなね」的なニュアンスになってしまったような。


ネットの生の声のテンションに比べ、実は私はそこまでのモヤモヤはなかった。それは「制作者はきっとそういう意図ではなかったんだろうな…」と瞬時に思ったからである。(あ、その方向で話を進めるわけではないので最後まで読んで下さい)

「頑張ってるを顔に出さないのがプロだぞ」 
…これが転職サイトやドリンク剤のCMで、男女関係ないシチュエーションだったら、ここまで声は上がらなかったかもしれない。こういうセリフは仕事においてわりと現実的に言われたりするから。「頑張ってます」「苦労してます」というだけじゃダメなんだ。過程うんぬんよりも、結果を出してナンボなのがプロだぞ!と言われた経験、みんなあるのではないだろうか。

ロングver.の方では誕生日で「あなたはもう女の子じゃない。若さだけでチヤホヤされない。現実が押し寄せる。これまでの可愛いは通用しない」と羅列し、「だから、これからの可愛いをアップデートしよう」と結んでいる。これも後半に重きを置くと「この日を境に、若さに頼らない、いい女になるために頑張ろうね」というふうに聞こえる。

推測ではあるけれど、制作した人たちは

「これまで『若さ』というものだけで切り抜けてきたものが、この先ホント通用しなくなるんだ。これは男女問わず、我々大人の実感だよ。そして君たちはそれをものすごく恐れているかもしれない。若くなくなることをこの世の終わりみたいに思うかもしれない。でも、そんなことは決してない。若さに頼らなくなった時、新しい世界も、新しい自分の魅力も出てくるんだ。だから若い女子たちよ、つらい現実を乗り越えて、頑張っていい女目指そうぜ」

というエールを切におくりたかったんでは…と思う。それが何となく分かるから、個人的にはアジエンスの時に感じたモヤモヤほどではなかったんだと思う。


…でも、である。 
そんなニュアンスは怒りの声を上げる女性たちだって少しは汲んでいるはずだ。
ではなぜ、怒っている?

もしかしたらこれを読んでいる人の中には「ったく、過剰に反応し過ぎ。悪く受け取りすぎだよオンナは…」なんて思う方もいるかもしれない。

私は、それこそがポイントなんだよ…と思う。


女はね、もうヘトヘトでクタクタなの。  
もう、たくさんなの。

だから、一部の人から見たらある意味、過敏に反応するの。
何年も何度も、自分がいくつになろうと同じ箇所にボディブローくらってそこが腫れ続けていたら、少し突かれただけでも「いやもうマジたくさん!痛いから!」と腹をかばうよね。そういうことだ。

(いや…女性だけじゃなく、過去の価値観に疲れ果てている男性も、きっと。)

「女は若くて可愛いのがいちばん」 
「男はオッサンになっても若い子と遊べるけど
 女はBBAになったらまじ終了」 
「男に好かれ、選ばれるのが最良の道」 
「恋愛してないとかヤバいよ」 
「早く結婚して子供産みなよ」 
「でも仕事はしないとだめだよ」 
「家事育児は言うても女の人が適任だよね」 
「女の人はいつもニコニコ出しゃばらず」 
「強い女は嫌われるよ」 
「母たる者、いつも慈愛に満ちてるべし」 

…そんな言葉の波状攻撃にさらされ続けて、それを黙って飲み込んできた年月が長いから、もう2016年にもなってそんなこと言われ続けるの、本当にいやなんすよ。もー知らんうるさい!ですよ。 
もちろんこれは女性自身が自分たちにかけてきた呪縛もあるかもしれない。だけど圧倒的に、「女性がそうであった方が都合がいい」世間からの、呪縛であると思う。 
だからね、インテグレートのCMはいずれも「主旨は理解してる。でもそのひとこと、本当にいらない」ってこってす。


「頑張ってるを顔に出さない」で頑張れ、という流れを、女性の外面をキレイにするコスメのCMに入れてはアカン。「頑張れ。でも知らぬ間にキレイを作っとけや by男」としか聞こえなくなるから。 

「生き方がこれからの顔になる」というコピーは素晴らしいと思う。40代女としてそれには激しく同意する。だけどそこに落とし込むためにわざわざハッピーなバースデーのシーンで「25過ぎたらこんなにツライ」を女子のホンネのていで当人たちに言わせる必要はない。特に広告ターゲットである年齢の女性たちには、エールどころか脅し文句にしか聞こえないから。(商品の宣伝ではなくドラマのワンシーンならよかったかも)


「これまで『若さ』というものだけで切り抜けてきたものが、この先ホント通用しなくなるんだよ、分かる?」という親切めいた忠告は、年長者(または男性)からわざわざ言われなくたって私たちすげー露骨に食らってるわ!ということだ。

広告は、もちろん時に今の自分に強烈なカウンターをくれるものでもいい。
のほほんとしていた自分をドキッとさせるものでもいい。

だけど、女性がキレイになるって本来、わくわくして楽しいことなんだ。いくつになっても、そうなんだ。そんな姿が、結果的には周りの人の目を楽しませてもくれるんだ。

だから、美容商品の広告で、どうか女性を脅かしたり説教したり、モヤッとした気持ちにさせないでほしい。こうなりたい、ああなろうという希望に満ちた思いで、商品を手に取らせてほしい。 
そして商品ジャンル限らず、これまでの男性主体の社会で通用してきた常識を、いつまでもチラつかせないでほしい。

アップデートすべきは、25歳からの可愛さなんかではなく、
世間における「女というもの」の認識だと思うのです。


【追記】この記事が公開されるまで少し日が経ってしまい、その間に予想以上の批判を受けた資生堂がCM自体の差し替えを検討し始め、当該CMは削除されてしまった。「制作意図が充分に伝わらなかった」というのが企業からのコメントである。うーん。そうなんだろうけど。

執筆者:

あゆみ

博報堂コピーライターからなぜかダンサーに転身。その後 (株)ネットプライス創業時からライター&クリエイティブディ レクターとしてEコマ―スに携わる。日本初の共同購入「ギャ ザリング」やブランド買い取り「ブランディア」の名づけ親。 「広野ゆうな」のペンネームでメルマガやブログを15年以上 書き続け、一部にコアなファンを持つ。現在はフリーでライ ティング、ネーミング、コピー、コラム、振付など手がける。

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