ウェブマガジン CM Funコラム

若造、年寄り、みんな、はみ出せ。

あゆみ

私たちの住むこの国には、とかく「不文律」が多いのであります。
それは明文化されていないしきたり、暗黙のルールのこと。


それらを察知し周囲と足並みを整える力、空気読みの敏感さ。
そんな国民性は時に優しさや思いやり、気づかいというかたちになり、
いいものもたくさん生み出してきたと思うのです。


しかしこれまでの常識や価値観が音を立てて変わっている今、
「この年齢なら、この属性なら、こうあるべきだよ」という不文律は、
残念ながら人々を苦しめる「脅し」になってることの方が多い気がします。


そういう脅しや同調圧力にはもううんざりだ!ということ、
だからそこから抜け出して好きに暮らそうぜ!ということを
私はここ数回のコラムでずっと書いてきました。


そんな時「私たちはそこから抜け出すよ!」というメッセージの
広告を立て続けに見つけたのです。


元来、人々をわくわくさせるはずの広告が
なぜか特定の人々をしょんぼりさせる脅しを発信したりしている中、
観ていてわくわくするCMは久しぶりで嬉しくなりました。


まずはこちらから。

【西武・そごう】アドバンストモード 樹木希林さんオリジナルムービー (詳細)

  • 広告主
    • 西武そごう
  • サービス
    • 企業CM
  • ビュアー
    • 63,724
0|0|0
HA
面白い!
好き!
感動!
「歳をとったら、歳相応の服を着なさいとか、 
 妻や母親、祖母という役割に自分を合わせなさいとか、 
 周りの人と同じように振る舞いなさいとか。 
 そんな窮屈な常識は、もういらない。」


ふだんのふんわりしたキャラクターとは違い、
力強い口調で語る希林さんがもう問答無用に格好いい。
メッセージのひとつひとつに諸手あげてイエーイ!とレスポンスしたい。


NYの個性的なスタイルを楽しむ60歳以上の女性たちを撮った
「アドバンスト・スタイル そのファッションが、人生」という映画。
それにインスパイアされたCMだというのは、
希林さんのファッションを見てもよく分かります。
あの映画に映し出された女性たちはものすごく自由で魅力的でした。
グレイヘアや白髪はカラフルな着こなしにこそ映えるし、
年齢を経た顔や身体はたくさんのアクセを重ねても「抜け感」が出る。
こればっかりは若い奴には到底マネできない魅力だ、と気づかされました。


そのスタイルが一般に馴染みやすいかというとそうではないけれど、
その「とんがり」を西武・そごうという百貨店が
日本の中高年の女性たちにメッセージとして打ち出してきたのは、
すごく素敵なことだと思うのです。


これまで女性のファッションやメイクを応援・先導してきた企業が
なぜか突然脅しのようなことばをCMに滲ませてしまったのとは真逆ですね。




そしてもうひとつはこちら。

【大塚食品】MATCH SET POSITION #集え、帰宅部のエース篇 (詳細)

0|0|0
HA
面白い!
好き!
感動!
「保護者の庇護のもと暮らしている10代」は、
いちばん色んな種類のルールや常識に縛られる世代でもあります。


集団生活、そして部活。受験。
そこに倣い属することが「いいこと」である、というのも
少しずつ崩れてきているかもしれません。


私自身は学校も部活も好きでしたし、
「ROOKIES」「スラムダンク」のような
部活を題材にした青春マンガにもすぐ涙します。
だけど「部活に入ってないやつはダメ」というのも
この多様化の時代には、もう違うんだろうな…と思うのです。


その世代の常識と、望ましい集団には属していない。 
同級生を尻目に、ひとり帰宅する。 
だけど自分には、好きなことやりたいことがあるんだ。


MATCHのCMはそれを見事に描いていてます。


このCMに登場している帰宅部エースのみなさん、
みんないい面がまえとバラエティに富んだ技で
うまいキャスティングと設定だなあと思っていたら、
彼らは役者ではなく、実際にその「やりたいこと」で
頭角を現している中高生なんだって。びっくり。
どいつもこいつも、格好いいです。

いい歳して。 
女なのに。 
男のくせに。 
まだ学生なんだから。


それを言ってくる人は、決して責任なんて取ってくれません。
自分が自分でないようなつらさを感じているなら、
そんな枠からはもう、はみ出していいんです。
自分を、他人を、ころしてしまわないためにも。




この世界は自由で可能性に満ちているのか。 
それとも嫌われないように上手く生きるべきなのか。 
広告は、その空気をつくる力が意外と大きい。


だからこそ、これからもこういうメッセージを
どんどん発信してくれたらなあと思うのです。

執筆者:

あゆみ

博報堂コピーライターからなぜかダンサーに転身。その後 (株)ネットプライス創業時からライター&クリエイティブディ レクターとしてEコマ―スに携わる。日本初の共同購入「ギャ ザリング」やブランド買い取り「ブランディア」の名づけ親。 「広野ゆうな」のペンネームでメルマガやブログを15年以上 書き続け、一部にコアなファンを持つ。現在はフリーでライ ティング、ネーミング、コピー、コラム、振付など手がける。

他のコラムを見る

前後のコラム

人気のコラム

最新のコラム

コラム一覧を見る