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友がみなわれよりえらく見ゆる日よ 
花を買ひ来て妻としたしむ

近藤あゆみ

どうしようもなく、自分に何もないことに落ち込む日がある。

ほんとは何もないことは、ない。 
屋根のある家に住めて三度三度のメシが食えて、
なんとか暮らせる仕事がある。家族がいる。
それでも「何もない」と思ってしまうのは、
「まだ何も成していない」と思っているからだ。

Facebookには友人知人の「こういうブロジェクトをやっています」
「こんな仕事をしたのでよかったら見て下さい」「子供が生まれました」
「家を建てました」などの報告が並ぶ。
Twitterでもずっとフォローしている人の「本を出すことになりました」
ずっと応援しているアーティストの「新しい作品リリースされます」の告知。

私にゃ、大声で言いふらしたいほどの何かは、ない。
それを待ち望んでる人も、いない。

私は「特別」になりたいのに、ぜんぜん「特別」ではない。 
だから、落ち込む。

そんなときに見つけたこのCM。

Hiver 「とくべつの歌篇 ダンスA」(30秒) (詳細)

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HA
面白い!
好き!
感動!
ホームに凛とたたずむお姉さんの唐突なダンスが衝撃的だ。

赤城乳業 イベールアイスデザート Hiver 「とくべつの歌篇 顔」(15秒) CM (詳細)

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HA
面白い!
好き!
感動!
こちらはきれいなお姉さんの顔が突如変わるのに仰天。
どちらも「可愛さ」「表向きの私」から遠く離れようとしているのが印象的。

そして心に残るのは「それがどうしたっていうのよ このタコ野郎〜」。
どちらのお姉さんもふざけているように見えて、
「今日とくべつな日じゃなかった 私だれかの特別じゃなかった」という、
文字にすると何だか心臓にぐっさり刺さってしまうような言葉を、
変な動きをすることで振り切っているかのような、諦観しているかのような。

歌っているのは関取 花さんという印象的な名前のシンガー。
フルバージョンで聴くと、この歌の全貌が分かる。

Hiver 「とくべつの歌篇 PV」 (詳細)

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HA
面白い!
好き!
感動!
「誰の目も気になりません」って感じで生きられたらいいけど、
心の中に「特別じゃなかった自分」に焦りや落ち込みがある。
でも気付けよ私、そうそう特別なことなんてないんだよ。
それがどうしたこのやろー。

繊細に複雑に揺れながら、かたちにならない気持ちをつかまえる。
だけどそれ以上深いところに行きたくなくて「タコ野郎」で振り切る。 
ああ、分かる、分かるよ。その弱さと強さ。


「もともと特別なオンリーワン」と歌ったグループは解散した。
「普通がいちばん」という言葉もよく分かる。

知ってるよ。だから自分は自分のできることを
ただコツコツやるだけだ。くさらず、あせらず。
それがいつか「特別」な自分になる(と思える)ための唯一の方法。

それでも夜の隙間に落っこちそうになる時が、必ずある。

そんな日は、タコ踊りや変顔をして肩の力を抜いたあと、
特別なアイスデザートで締めようじゃないか。

花を手に帰宅した、石川啄木のように。


…きっとそういうメッセージだ…よね?
赤城乳業さん。
執筆者:近藤あゆみ
博報堂コピーライターからなぜかダンサーに転身。その後
(株)ネットプライス創業時からライター&クリエイティブディ
レクターとしてEコマ―スに携わる。日本初の共同購入「ギャ
ザリング」やブランド買い取り「ブランディア」の名づけ親。
「広野ゆうな」のペンネームでメルマガやブログを15年以上
書き続け、一部にコアなファンを持つ。現在はフリーでライ
ティング、ネーミング、コピー、コラム、振付など手がける。

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