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変わる、ふくらむ、桃太郎。

近藤あゆみ

不思議なことに、ここんとこずっと、
桃太郎が広告に登場しっぱなしじゃないですか?

昔ばなしを使うのは手あかがついたやり方。
そんなふうに思うのは逆にもう古いのかもしれない。

昔ばなしは理不尽なとこ、不条理なとこがたくさんあって、
ツッコミどころも満載。
それは知育アプリの仕事の時に童話のリライトをしていて
毎回すごく感じていた。

そんな中で桃太郎をキャラとして採用する広告が多いということは、
知名度はもちろんのこと、いちばんアレンジしやすく、
ツッコみやすい素材なのかもしれない。

というわけで3つ並べてその世界観を比べてみた。 
2つはもう皆さんおなじみです。

ペプシネックス ゼロ『桃太郎「Episode.ZERO」』篇 90秒 小栗旬 サントリー CM (詳細)

  • 広告主
  • サービス
    • ペプシネックス
  • ビュアー
    • 2,592,678
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HA
面白い!
好き!
感動!
近年ではこれがいちばん皆の度肝を抜いた桃太郎だろう。
ハリウッド映画みたいなスケール感と格好良さ。

鬼は本当はもともと人間と共存する敬愛される存在だったが、
その強さを人間が恐れ、隔離した。その末に悪鬼となる。 
その設定も、桃太郎の修業シーンも含め、どことなく
「スターウォーズ」感のあるCMだ。
鬼はもちろん、桃太郎もむちゃくちゃ強い。
犬、猿、キジもカッコいい。対等なバディ感がある。 
コピーは「自分より強いヤツを倒せ。」
男の冒険、成長物語であり、(己と、強い何かとの)闘いがテーマだ。

次に皆が知ることとなった桃太郎は、
小栗桃太郎とはあまりに違うあの人だった。

スーパーカケホ TVCM │ au「鬼、登場」篇 30秒 (詳細)

  • 広告主
    • KDDI
  • サービス
    • スーパーカケホ
  • ビュアー
    • 3,165,930
HA
面白い!
好き!
感動!
桃太郎はイケメンだが、「桃ちゃん」なんて呼ばれてる。
浦ちゃん金ちゃんと仲良しで、今どきの若者だ。 
軽いのは鬼も一緒。鬼ちゃんは軽さの極み。そして気のイイ奴。
いったん喧嘩したらマブダチ。争う理由はもうないのです。 
犬、猿、キジはお供というより、可愛いペットという感覚。

ここに登場する誰もが戦いを好まず、己を鼓舞せず痛めつけず、
仲良く、日々を平和に暮らしている。
成長うんぬんよりもまず「仲間を大切に」なのだ。


そして最新の桃太郎はもっとすごい変身を遂げた。

PEACH JOHN the CATALOGUE 100th ANNIVERSARY ISSUE 「桃太郎―ラ」の物語ver.1 (詳細)

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HA
面白い!
好き!
感動!
桃太郎は男性ですらなくなっている。
可愛いランジェリーをつけた美女だ。

お洒落極まりない犬、猿、キジが桃太郎を見いだす。
そしてみんなでランジェリーをつけ、キレイを磨く。

鬼は男性。でもセクシーワイルドなイケメン。
桃太郎ーラ美女軍団は、己の魅力で鬼を
更正(陥落)させ、みんなで仲良く暮らす。

auの「みんなで平和で仲良く」とは似ているようで違う。
桃太郎ーラたちは自信にあふれた女たちで、
自分たちの意思と武器(力でも刀でもなく、魅力)で
荒ぶる者たちを変化させてしまう。 
「この世は私たちの自信と魅力で、どうにでも変えられるの」
というメッセージ。
常に女性たちと共に歩んできたピーチジョンが
創刊100号記念に採用したのが桃太郎というのが興味深い。


小栗桃太郎(男の戦い)→松田桃太郎(平和と仲間)
→桃太郎ーラ(女の主体性と威力)。
この流れは偶然かもしれないけど、同じ題材だけに
短い期間に描き方が変わったという感じをすごく受ける。

もちろん男くさく格好いいものがもう流行らないとかじゃない。
それはそれで、永遠に「いいもの」としてあり続けるだろう。
だけど、桃太郎ひとつ取ってもこの変遷だ、他のCMも広告も、
ありとあらゆる表現物に、こういう急な変化はあるかもと思った。


そういえば数年前、新聞広告のコンテストで、
泣いているちいさな赤鬼のイラストの上に
「ぼくのおとうさんは、桃太郎というやつに殺されました。」
というコピーをのせた作品がグランプリを取ったっけ。 
とても衝撃的だった。そうだよな…と思った。
あの広告に至っては、桃太郎は英雄やいい人ですらない。


桃太郎って、ほんとは一体なんだ。 
深く掘ってぐるりと眺めて考える甲斐のある
キャラクターなのは間違いない。

ああ、もしかしたら桃太郎って、
「日本そのもの」なのかもしれないな。
執筆者:近藤あゆみ
博報堂コピーライターからなぜかダンサーに転身。その後
(株)ネットプライス創業時からライター&クリエイティブディ
レクターとしてEコマ―スに携わる。日本初の共同購入「ギャ
ザリング」やブランド買い取り「ブランディア」の名づけ親。
「広野ゆうな」のペンネームでメルマガやブログを15年以上
書き続け、一部にコアなファンを持つ。現在はフリーでライ
ティング、ネーミング、コピー、コラム、振付など手がける。

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