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「あつい」と「あつい」と「あつあつ」と。

近藤あゆみ

「日本語は他言語に比べて習得が難しい」なんてことをよく言いますが
(何だろうこの落語のまくらみたいな入りは)、
あれは果たして本当なんでしょうか。

「こういうのは日本にしかできないこと!素晴らしい!」
という番組がやたらと増えた昨今、日本は好きだけど
あの手放し賛美が好きじゃないもんだから妙に疑り深くなって
「ほんとかよ…?他言語だって充分難しいだろ…??」と言いたくなります。

そんな私でも、このCMを観て思わず
「うわー日本語難しい…!」と唸りました。

コカ・コーラ CM

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HA
面白い!
好き!
感動!
TVで観ている時は映像と音声とコピーを同時に観ているから
特に気にならなかったんですが、街中の巨大スクリーンに
このCMがかかった時、音声だけが耳に飛び込んできたのでそう思いました。

綾瀬はるかさんのナレーションは、文字のみで表記すると、こうです。

あつくなったときも。 
あつくなったときも。 
あつあつなときも。

文字だけだと、違いが全然分からないんです。 
実際のコピーと映像は、こうです。

熱くなった時も。(サッカー中継を観ながら) 
暑くなった時も。(お風呂上がりに) 
アツアツな時も。(ベッドで寄り添いながら)

これは分かりやすいですよね。

で、ナレーションだけ聞くとこのコピー、
三行の差異は「イントネーションの違い」だけなんです。

「あ」つくなったときも。 
あつ「く」なったときも。 
あつあつ「な」ときも。

「」内が、読む時に強調される(高くなる)箇所です。

これだけで全然状況が違う単語になる!
ということに今さらながら驚きました。

もちろん多言語にだってそういう部分はたくさんあるでしょうが、
あまり口を開かずものすごく小さなニュアンスの中で、一音の強弱を
聞き取って判断するって面倒くさい言語だなと(笑)でも面白いなと。

そういう意味でこのCMは興味深かったし、日本らしいなと思いました。


ただどうしても引っかかるのは、私は最近の話し言葉だと

熱くなる(テンションが高くなる)→あつ「く」なる 
暑くなる(気温上昇に伴う体感温度上昇)→「あ」つくなる

なのではと思っているのですが、このCMでは逆なんですよね。
(ネットでは私と同じく「逆じゃない?」と思ってる人を何人か見かけました)

形容詞「あつい」としての正確な発音は本来、

熱い・暑い → あ「つ」い 
厚い・篤い → あ つ い (三音とも平坦)

なのでしょうけど、
最近は「ついアツくなっちゃった」「アツい男だね」
みたいな使い方の「熱い」は「厚い・篤い」と同じく平坦に発音しますよね。
(この平坦化に苦言を呈している方もネットで何人か見かけました(笑))

そういう意味でもこのCMイントネーションは違うんだよな…。
あ、これきっと方言になったらまた違うんですよね。 
ううん…やっぱり日本語は難しい。
執筆者:近藤あゆみ
博報堂コピーライターからなぜかダンサーに転身。その後
(株)ネットプライス創業時からライター&クリエイティブディ
レクターとしてEコマ―スに携わる。日本初の共同購入「ギャ
ザリング」やブランド買い取り「ブランディア」の名づけ親。
「広野ゆうな」のペンネームでメルマガやブログを15年以上
書き続け、一部にコアなファンを持つ。現在はフリーでライ
ティング、ネーミング、コピー、コラム、振付など手がける。

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