ウェブマガジン CM Funコラム

「結婚」にまつわるふたつの現実。

近藤あゆみ

画面を観ずに音声だけ聞いて家事をしていて、
思わず「おっ」と手が止まったCM、来た。

ゼクシィCM「私は、あなたと結婚したいのです」風船篇

リクルート ゼクシィCM「私は、あなたと結婚したいのです」風船篇 30秒 (詳細)

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HA
面白い!
好き!
感動!
ゼクシィ。結婚時の必需品とも、男性に無言のプレッシャーをかける
インテリアグッズとも言われる、凶器になり得る分厚さの雑誌。

私自身は「これを読んだら情報過多で却って混乱しそう」とひるんでしまい
結局一切お世話になることなく結婚式を挙げてしまったというのもあるんだが、
よく目にするCMにいつもちょっぴりの違和感を感じていた。

それはそれは甘いゴールインの姿ばかり描いてるなあとか、
登場する花嫁がいつもやけに若いよなあとか、そんな感じの。
きっと結婚式に多大な夢と希望を持ち、「私の一世一代のイベント」感を
持つ女性たちをターゲットにしているのだろうなんて、勝手に思い込んでいた。
(全体的に考えがひねくれてますかね…?)

だからこそ、今回のゼクシィのこのコピーに驚いた。

「結婚しなくても幸せになれるこの時代に私は、あなたと結婚したいのです。」

おお、あなたが、ゼクシィさまが、ついにそう言うか。

ネットでの反応同様、私もとてもいいコピーだなと思う。 
フツー、結婚はするもんだ。 
結婚すれば幸せになれる。 
そんなのは幻想であり、特に今の時代はその考えで生きると
むしろ己か誰かを追い込んだり傷つけたりする危険すらある。 
選択肢はさまざまでいい。可能性も昔に比べずっと多様になった。
だからこそ「結婚しなくても幸せになれるこの時代」というコピーを
幸せな結婚のアイコンともいえるゼクシィが打ち出したのは、
大きな一歩だと思う。

結婚に「あえてそれを選ぶ理由」をちゃんとつけている、
というふうにも取れるし。
そう思ってシャガールの絵画のように空を舞う新婚夫婦を観ると、
お互いの意思をきちんと感じるような気がして好感度もアップ。(単純)


そして数日後。同じく音声だけを聞いていて、
思わず驚いて画面を確認してしまった結婚CMが、来た。


ハナマルキ・液体塩こうじCM 「妻の悲劇篇」

ハナマルキ・液体塩こうじCM 「妻の悲劇篇」 15秒 (詳細)

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HA
面白い!
好き!
感動!
「夫にもう愛情はない。というか生理的に無理。」

例えメディアで、妻たちの間で、密やかに囁かれてきたといえど、
こんな身もフタもない断言をいまだかつてCMで聞いたことがあるだろうか。

夫なんてどうでもいいので料理も手を抜いている。
だけど液体塩こうじのせいで美味しく仕上がってしまい、
結果的に夫は大満足で、しあわせ。
嬉しそうな夫に「よかった」と棒読みで応える妻の心中は闇の中である。

「夫はこういう毎日が永遠に続いて平和だと思っているが、
妻はある日突然に熟年離婚を切り出し、夫はポカーン」みたいなのって
こういう夫婦に起きるのかなあ…なんてドキドキしてしまう。 
主婦飲み会をした時、かなりの数の妻たちが自分の夫のことを
「まじ鬱陶しい」「キモい」と言っていた事実を思い出させるCMであるよ…。

そしてハナマルキのこのCM、実は「夫篇」もあるんです。
公式には上がっていないけど探してみて下さい。
夫の視点バージョンのCMがあるから。これもまた恐ろしさ満点です。


ハナマルキの夫婦も、かつてはゼクシィの夫婦のようだったのだろうか。
何がどうなって、「それでもあなたと結婚したい」が「生理的に無理」へと
変化したのだろうか(何となく理由は分かりますが…)。
そしてなぜ、こうなってまでも夫婦は一緒に居続けるのか。

結婚も、夫婦も、不思議で、謎である。
その明確な答えは結婚9年目の私にはとんと出ていない。

ただ、思っていたより盤石なものではないから、
バージョンアップやこまめなお手入れが必要だなあと実感している。


何はともあれそういうことを思い出させてくれる2つのCM、
結婚の「今」としてお見事です。
執筆者:近藤あゆみ
博報堂コピーライターからなぜかダンサーに転身。その後
(株)ネットプライス創業時からライター&クリエイティブディ
レクターとしてEコマ―スに携わる。日本初の共同購入「ギャ
ザリング」やブランド買い取り「ブランディア」の名づけ親。
「広野ゆうな」のペンネームでメルマガやブログを15年以上
書き続け、一部にコアなファンを持つ。現在はフリーでライ
ティング、ネーミング、コピー、コラム、振付など手がける。

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