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【特集】
コピーは世につれ・・・
企業をあらわすメッセージ 1

岡田直也

次なる【特集】は、「企業を語るメッセージ」です。

 

その企業の「価値」をメッセージしているもの

企業が考えていることをきちんと表明しているもの。

そんなキャッチフレーズを紹介しよう、というわけです。

 

いわゆる「企業スローガン」とはちがう。

多くのスローガンは、「規定」にとどまっていることが多いから。

とはいえ、スローガンのなかでも例外的な、たんなる規定を超えて、

受け手とコミュニケーションができている上手なフレーズは、

特別扱いしてもいいかな、と思っています。

 

商品キャッチフレーズも原則として扱いませんが、

じつはここから「企業メッセージ」に昇格したものもあったりする。

そういうものも、やはり例外として取り上げます。

 

それから、よくいわれる「企業広告」というコトバは使いません。

B to B、ステークホルダー対策なども入ってきてしまうから。

ここで扱うのは、あくまでB to Cです。

 

 

そんなこんなで(かなりぼくの個人的見解がはいっていますが)、

今回も、誠文堂新光社・六耀社・宣伝会議刊の

「コピー年鑑」「TCC広告年鑑」から厳選、引用します。

 

対象年代は、1980年から、10年前の2007年まで。

途中にバブルをはさむ、変化に富んだ20数年です。

 

 

 

そもそも、企業メッセージ体裁の広告は、

1980年代前半には、そう多くはありませんでした。

それが、バブル期に至って急激に増えたのです。

この時期は、いわゆるCI活動もブームになっていて、

ようは企業に、広告を大量出稿する余裕があった、ということでしょうか。

それが、景気後退とともに、急速にしぼんでゆく。

そして唯一、世紀の変わり目あたりの企業メッセージを支えた

テーマは「環境」・・・大きな流れは、そんな感じになると思います。

 

企業メッセージの「中身」はといえば、

1980年代前半には受け手寄りのスタンスだったものが、

時が進むにつれ、どんどんクライアント発想になっていった。

そして21世紀にはいってからは、受け手とクライアントを上手につなぐ、

いくつかの少数精鋭コピーだけが残ってゆく(その実例は、のちに示します)。

そんな推移が、しっかりと見てとれるようです。

 

ではまず、80年代初頭とバブル期の違いをみるために、

2つの象徴的なコピーワークを、比べてみましょう。


1.(1980年)

・私たちは、海の歌を30曲は歌える。

・海の字は母の字がある。なぜかな。

・海は人と魚のラブ・ストーリーだ。

・きょう、海に挨拶をしましたか。

(シリーズ広告です) 


~1980年代、海と魚はあたらしい意味を持つ。

SAKANA‘80 ニッスイ



 2.(1990年)

・なーんだ簡単なアイデアだ。と気づいたら、それは正しい新製品。

・もっと早く生んでほしかった。と感じたら、それはまじめな新製品。

・そんなの出来るわけがない。と思ったら、それはすぐれた新製品。

SHARP (これもシリーズです) 


この違いは、「ウイスキーの名コピー」でふれた、

「酔いの表現」から「覚醒」への流れと重なります。

SHARPでは、商品がだいぶはっきりしてきていますね。

ニッスイでは、「魚」が一文字でてくるだけなのに。

 

ちなみに、このSHARPって上手だな、と思うのは、

商品と開発者とユーザーが、一体となっているところ。

そう、この時代はもっとナマな、「規定」っぽいフレーズが、

つまりクライアントからの一方通行なメッセージが、

かなり幅をきかせていました。

そのなかにあって、クライアントを安心させつつ、

ユーザーも巻き込んだこの書きかたは、じつにウマイ。

 

 

・・・というあたりを導入にしつつ、

ひとつの企業にしぼって、メッセージを時系列で追い、

名作を紹介しつつ、その流れを確認してみることにします。

 

その企業とは?

ぼくもかつて担当したことがある、西武百貨店です。

 

 3.じぶん、新発見。1981

 

 4.不思議、大好き。1982

 

 5.おいしい生活。1983

 

このあたりは、誰でも知っているキャッチフレーズでしょう。

広告が、受け手より一歩まえに進んでた。

いろんな価値観や夢を、提供することができた。

まして百貨店は、商品ジャンルや老若男女を問わず、

トータルに消費を喚起することができたのですね。

 

 6.各人停車 1984

 

 7.うれしいね、サッちゃん。1985

 

 8.情熱発電所 1986

 

 9.元禄ルネッサンス。1987

 

 

西武の独壇場は、つづきました。

ちなみに7.は、

「コドモの目と、オトナの知恵で。」の一行とセットでした。

 

10.ほしいものが、ほしいわ。1988

 

これは、「バブル時代」の特集で、いちどふれました。

あくなき消費欲、そして所有欲。

まさに、このときの気分を象徴しています。

 

11.より道主義だ。1990

 

12.足りないものは何ですか。1991

 

とくに12は、「飽食の時代」を皮肉っていますね。

ちなみにこれ、ぼくの作です。

 

・・・と、ここまではいいんです。

ところが、バブル経済の崩壊とともに、

西武百貨店は、急速に勢いをなくしてしまう。

そして、広告では、

 

13.まず、四月の新学期までに、 

商品の包みか他の一番じょうずな 

百貨店になります。        1993

 

14.西武がもらう通知表には、 

どんなことが書いてあるんだろう。 1994

 

15.セイヴ。~簡易包装にすることは、 

緑をSAVEすることなんだね。   1995

 

どうですか、この変貌ぶり!

バブルを境に、これだけメッセージ内容が変わった企業は、

ほかを探しても、まず見つからないでしょう。

ちなみに同百貨店はそれ以後、

目立った広告メッセージを発信していません。


年鑑への掲載がおおい伊勢丹、岩田屋など他の百貨店も、

だいたいおなじような傾向とともに推移しています。



では最後に、お口直し。

80年代限定にはなりますが、とてもわかりやすい〇l〇lのキャチフレーズを、

ここでご紹介しておきましょう。


16.部屋から始まる。1980 (掲載は1981年) 

・・・このボディコピーが秀逸でした。「写経」したおぼえがあります・・・。


17.ふたりで、咲きましょ。(1982)


18.好きで、いっしょで。(1984)


19.そろそろ次のこと。(1986)


20.部屋においでよ。(1990)


・・・どうです? ちょっとほっこり、しますよね。


<コピーは世につれ・・・企業をあらわすメッセージ記事一覧> 

執筆者:岡田直也
CMは、世の中の動きとまさに連動しています。イケイケの時は
勢いがいいし、沈滞してるときはどこか内省的になったりする。
そういう意味でCM観察とは、立派な社会学・考現学といえます。
それとは対極の「神はディテールに宿り給う」。これもまた事実。
些細な演出の妙など、作り手の意志が際立つ場合も、あるのです。
そう、CMの観かたは、大所高所から重箱の隅にいたるまで無限。
ぼくらがそれを、いろんな角度から提示できれば、と思ってます。

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