ウェブマガジン CM Funコラム

「いま」があるCM。

近藤あゆみ

ここのところ私のコラムは

「どんどん変わりゆくジェンダー観を始めとする

さまざまな価値観」と「広告の旧来のままの認識」の

ズレの話ばかり書いてるような気がします…すいません。


でも今回はちょっと違います。

逆に「おお、こう描いてくれたか!」というお話です。 

今の時代の流れに合っていて、作り手がそれを当たり前の

ものとして表現しているような雰囲気が漂うCMたちです。


まずはこちら。

花王 ビオレ メイク落とし メイクをもっと楽しもう! 60秒 CM

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15秒ver.もありますが、60秒ver.の方が圧倒的に良さが伝わりますね。


これまでのメイク落としCMといえば帰宅したOLっぽい女の子が

自宅で「ふう、やっとメイク落とせる」という感じで

すっぴんになる流れが多かった気がします。

メイクした状態もそれなりに楽しげではありましたが、

どこか「鎧をまとっていた→やっと取った」という

匂いがありました。


でもこちらは違います。メイク落としのCMなのに、

メイクしている人々の映る時間が大半です。 

そして彼らはみなものすごく楽しそう。

日常レベルのお洒落から、仮装、コスプレ、パーティーメイク。

さまざまなジャンルのメイクが登場し、そのいずれもが

「誰かのため」ではなく「自分のため」の攻めメイク!という感じ。


さらにいいなと思うのは、男性が何人も登場していること。

カッコよくなるため、美しく見せるため、お祭り気分を盛り上げるため、

さまざまなタイプの男性が何のてらいもなく当たり前にメイクを施し、

「これが自分のスタイルだよ」と微笑んでいること。

化粧品ジャンルのCMでこれは結構画期的なことなのではないかな。


メイクをしている時も、メイクを落とした後も、

男も女も、みんな楽しそうに笑ってる。

どっちも私で、どっちの自分も好き。

そんな声が脳内で勝手に聞こえてくるような

ハッピーな仕上がり。このCMだいすきです。


次は「ピックアップCM」にも取り上げられていたこちら。

リポビタンD WebCM 「ファイト不発!?ケイン・コスギ×大場美和」篇

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これ、大正製薬の公式Twitterでは

「『緊迫した状況でかけ声なんか掛け合うはずないだろ!』

というクレームを多く頂いたので、こうしてみました」という

コメントと共に公開されていましたね。


大正製薬、やるなあという感じです。 

人を食ったようなセルフパロディに見せてますが、

けっこう今の価値観に沿ってるなと思うんですよ。


女性がピンチだ助けろケイン!ヒロイズム溢れる瞬間。

しかし「いえ、自分で登れるんで」とばかりに

完全にスルーしてピンチを脱し先をゆく女性。

「実はプロクライマーでした!」というオチがありますが、

それがなくてもいけるんじゃないかと思いました。


「スターウォーズ・フォースの覚醒」や

「ジュラシックワールド」でも見受けられた、

「男性主人公がピンチの女性に手を差し出すと

『そんな必要はないわ』とばかりにスルーされ、

先に行かれてしまう」というシーン。 

ヒロインはピンチに陥ってヒーローに助け出される役。

そんな従来のお約束を裏切る展開は、ハリウッドでも

目立ってきている気がします。


そこに合わせたかのような大正製薬、やるじゃんと思いました。 

ラストの「ジェネレーションギャップ!」のセリフは思わず

笑いましたが、これは「最近の若者」宛てではなく

「今の時代」宛てなのでしょう。

もうこれが当たり前の時代じゃないんだな!とね。


でもこのCMを公開した大正製薬のTwitterには

「手を差し出してるのに無視するなんて礼儀知らずだ」

「ファイト一発!がないリポDなんてつまらない」

というリプライがたくさんついていて、

正直「分かってねえなあ」と思いました(笑)

狙いはそこじゃないし、分かっててやってるでしょこれ。


そして最後はこれ。

麻婆豆腐の素「父親になったボク」篇 90秒 (詳細)

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先日は牛乳石鹸のCMのお父さんが議論を呼びましたが、

こちらはもう、お手本のようなお父さんですね(笑)

ごく普通に家事育児を分担してる。 

送りと(この日の)夕食はお父さん。迎えはお母さん。

撮ったのは自らも二児の母という女性監督だそうですが、

実際共働きの家庭はこれが日常なんだろうと思います。


東出くん扮する彼の幼少期は、遊びから帰ると

お母さんが食卓を用意していましたが、今は彼が作ってる。

そして彼の料理を食べて「しあわせ…♪」とつぶやく奥さん。 

どちらか片方に負担が偏らない。

どちらもその時々で分担して協力し合う。

かなり理想的な描かれ方ではあるけど、できれば

こうあって欲しいし、これが当たり前の社会で

いて欲しいなと思います。


(牛乳石鹸のお父さんみたいなモヤモヤってもちろん

あるのかもしれないけど、それは男女お互いあるよねきっと)


CMはかつて、時代の一歩先を行ったし、

時代の旬な空気を鮮やかに切り取ってもいました。



今はその感覚の鋭さがちょっと鈍っているな…と

感じるものがいくつかあって、残念な時もあるけど、

こういう「まさに今」な姿勢で作られるものもあるので、

CMにはまだまだ可能性がたくさんあるんだと思います。

執筆者:近藤あゆみ
博報堂コピーライターからなぜかダンサーに転身。その後
(株)ネットプライス創業時からライター&クリエイティブディ
レクターとしてEコマ―スに携わる。日本初の共同購入「ギャ
ザリング」やブランド買い取り「ブランディア」の名づけ親。
「広野ゆうな」のペンネームでメルマガやブログを15年以上
書き続け、一部にコアなファンを持つ。現在はフリーでライ
ティング、ネーミング、コピー、コラム、振付など手がける。

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