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私たちの「しあわせって何だっけ」。

近藤あゆみ

かつて明石家さんまは、キッコーマンのCMで
「しあわせって 何だっけ 何だっけ」と歌っていた。
この歌とCMはとても流行ったのだけど、
今期の新しいearth music&ecologyのCMを観たら
何だかそのフレーズが久しぶりに頭に浮かんできた。

今回は20代、30代、40代、各世代の女たちそれぞれの
「しあわせ」についてのモノローグがとても特徴的だ。
それぞれの年代を通ってきた私にとっては
どれも「らしいなあ」と思うものばかり。

earth music&ecology 2017秋「幸せについて~線路沿い~」篇30秒 (詳細)

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HA
面白い!
好き!
感動!
20代。広瀬すずのモノローグは、
一度聴くと何だか前向きでけなげだ。 
でももう一度聴くと、心配になってくる。

「人の悪口を言わない 知ったかぶりをしない 
あーだこーだ言い訳をしない 自分を過大評価しない 
ねたまない うぬぼれない 思い上がらない 
高慢ちきとかあり得ない 眉間にシワを寄せない…」

しあわせになるための「心がけ」なのだろうけど、
つらくないか。これはハードル高くないか、20代。
通して聴くと見事に「人には優しく自分には厳しく」なのだ。

私は自らの経験から「20代は自己肯定力が低い」と知っている。
だから、自分を過大評価して、高慢ちきなくらいで
ちょうど釣り合いが取れるんじゃないかと思うのだ。

20代の傲慢はまだ、若さで許される可愛げがある。
それよりも、良識で自分を押さえつけてしまうと後がこわい。
人の顔色をうかがうことで得るしあわせは、自分の軸を失わせる。

そしてそこまで心がけを並べてもなお、
見たらしあわせになれるというドクターイエロー(おまじない)を
見つけてしまうすずちゃんの、
「どうにかしてしあわせになりたい」という必死さと不安。 
その頑張りに見合うしあわせって、一体なんだい。
心がざわざわして思わず「もっと好きに生きな…」と
言ってしまいそうなのは、私だけでしょうか。

アースミュージック&エコロジー earth music&ecology 2017秋「幸せについて~校舎の裏~」篇30秒 CM (詳細)

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HA
面白い!
好き!
感動!
30代。宮崎あおいのモノローグは、
一気に肩の力が抜けるので少しホッとする。

小さなしあわせをコツコツ集めよう。
たまったら、パーッと使う。
そしてまた集めればいい。

「しあわせを使う」が何の比喩かは
人それぞれだと思うけど、
「しあわせすぎて怖いと思うくらいなら」とか
「しあわせに振り回されない」とかのフレーズが
ちょっぴり気になる。

小さくてもいいよねと言いながら、
しあわせには決して固執するなと言っている。
堪能したら手放してしまえと言っている。
むやみに完璧なしあわせを探してはダメだと。

これは、20代でどデカいしあわせを探し、
得たしあわせをパーフェクトだと思おうとし、
それに疲れて手放したひとの言葉なのかもしれない。

ああ、この人はかつて傷ついたんだな。
そして現実を見つつ、舞い上がらず、
身の丈を考えて歩こうとしてるんだな。

だから肩の力は抜けてるけど、ちょっと切ない。
そう思うのは私だけでしょうか。

アースミュージック&エコロジー earth music&ecology 2017秋「幸せについて~白線の上~」篇30秒 CM (詳細)

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HA
面白い!
好き!
感動!
40代。鈴木京香のモノローグは
もう、しあわせの定義レベルが違ってる。

20代30代のしあわせは「恋愛」や「仕事」や
「夢」や「人間関係」に置き換えられるけど、
40代のこれは、ただシンプルな「生活」だ。

ごはん食べて風呂入って寝て歩く。
これらを毎日「ちゃんと」やる。
…もうそれだけでしあわせなのだよ!と。

探すもんでもなく、与えてもらうもんでもない。
しあわせは、普通の日々を元気で暮らすこと、
それだけでいい。というか、それが至上。

自分がいま40代だからなのかもしれないが、
これはまさに真実だと思う。
デートする、友達と騒ぐ、夜更かしする…。
そういうものはいわば、打ち上げ花火なのだ。

毎日の当たり前の日課や、やるべきことを
ちゃんとやってないと、打ち上げ花火の後の
身体と心は意外とつらくなってしまう。

逆に、暮らしの土台を地味でもいいから
ちゃんと作っておくと、心身はすっきりするのだ。

だけどこれは、この年にならないと痛感しないことだ。
若い頃は、そんなこと1mmも考えられなかった。

健康で、自分がしゃんとここに立ってること。
それが、しあわせのための大事な基本。
つまんないことは、実はつまんなくないのだ。
それに気づくのが、40代の楽しさだと思う。


このシリーズは、面白い。
それぞれのしあわせ感をうまくとらえていると思う。

言葉の面だけじゃなく、映像もとても興味深い。
しあわせモノローグとは反比例するように、
20代すずの歩く道は見通しがよく広く、
30代あおいは少し狭い道になり、
40代京香は、のんびりした語り口とは裏腹に
細い細い白線の上を歩いてる。

年とともに生き方がラクになるのと同時に、
自分を取り巻く状況はのっぴきならなくなる。
自分と、自分の大事なものからは、逃げられない。
そんな状況までもひっそりとあらわしているように
思えるのは、私だけでしょうか。


明石家さんまのしあわせの答えは
「ポン酢しょうゆのある家(うち)さ」だった。
 
現代のしあわせと人生は、
特に女にとってはもう少し複雑だ。

だけど楽ちんになる道は、
ちゃんとあったりもする。


そんなことをじわじわ考えられる、
いいCMだったと、私は思います。
執筆者:近藤あゆみ
博報堂コピーライターからなぜかダンサーに転身。その後
(株)ネットプライス創業時からライター&クリエイティブディ
レクターとしてEコマ―スに携わる。日本初の共同購入「ギャ
ザリング」やブランド買い取り「ブランディア」の名づけ親。
「広野ゆうな」のペンネームでメルマガやブログを15年以上
書き続け、一部にコアなファンを持つ。現在はフリーでライ
ティング、ネーミング、コピー、コラム、振付など手がける。

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