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【特集】
女性コピーライターたちよ!

岡田直也

さてさて、今回の特集は、「女性コピーライター」。

 

1980年から直近までの間に世に出た、女性の手になるコピーを、

存分に味わってもらおう、という企画です。

 

 

とにかくこの業界、いまだに男社会。ほんとうに、そう思います。

そもそも、女性コピーライターの絶対数が、すくないんですね。

 

たとえば、1980年の「コピー年鑑」(誠文堂新光社刊)によると、

作品が掲載された人数ベースで、

女性の割合は、全体の7%(岡田調べ)。

そんな状態が、しばらくつづくことになります。

さすがに最近は、女性比率も上がってはきましたが、

2016年の「コピー年鑑」(宣伝会議刊)によれば、

それでも19%と、いまだ2割にとどいていません(岡田調べ)。

 

ほんらいは、半数いなきゃいけないのにね。

 

 

・・・ということを前提にして、

女性コピーライターたちが、男社会のなかでどんな頑張りを見せてきたか、

どんな境地をひらいていったかを、時系列に見ていきたい、と思います。

まず前編として、1980年から2000年までを扱います。

 

チョイスの基準は、「ぼくの好きなコピー」です。

「上手だなあ」だったり、「ぼくには書けないなあ」だったりします。

とにかく、リスペクトすべきものを集めてみました。

 

それから、いままでの特集が、みなそうだったんですが、

「個人」は、とりあえず捨象します。

(ほんとは、書き手の個性がすべて、だったりするんだけど。

 まあ、業界向けなら個人ベースで書きますが、ここはそうではないので)

 

なお、例によって出典を明記します。

 

  • 1980年~1989年 誠文堂新光社「コピー年鑑」 
  • 1990年~1998年 誠文堂新光社「TCC広告年鑑」 
  • 1999年      宣伝会議「TCC広告年鑑」 
  • 2000年      宣伝会議「コピー年鑑」

 

では、はじめましょうか。

 

 

 1.1930年代、女性は謎であった。 

(1980 渋谷西武 ファッションウィーク) 

 ・・・ 若いころ、カッコいいコピーだなあ、と思ったもんです。

 

 2.足の長い動物は御しにくい。 

 (1980 Diana靴店)

 

 3.足は、あなたのものであり、みんなのものでもあるのだよ。  

 (1981 Diana靴店)

 

 4.女が好きなものは、男だって好きなのだ。  

 (1982 Diana靴店) 

・・・1~4に共通しているのは、「一般論」と「客観性」。

大多数の男を向こうにまわして、頑張ってます、

といったら、たいへん失礼にはなるけれど。

でも、この感じが出発点でした。

 

 5.女の 魅力が 複利で ふえる 服が、いいわね。  

 (1984 レナウン) 

・・・すこしトーンが変わってきました。

この一行のミソは「複利」なんですが、

日常使うコトバではないので、まだちょっと硬いかな。

 

 6.ぼくらのお腹は、空腹でふくらんでいる。  

 (1986 読売アフリカ募金)  

・・・「主観」になりましたね。

この傾向は、どんどん強まっていきます。

ちなみにこの作品、ビジュアルは文字通り、

やせ衰えてお腹のふくらんだ、アフリカの子どもです。

 

 7.女だって、女房が欲しい。  

 (1986 NTT)

 

 8.男も妊娠すればいいんだ。  

 (1988 オカモト) 

 ・・・いやあ、ぼくだったらこんなにきっぱりモノ言えないな。

 やさしいコトバで切り込むチカラ、すごいですね。

 そして、すごい共感を呼ぶんだろうなあ。

 

 9.赤坂は、もっと早起きしようよ。  

        丸の内は、仕事のしすぎだなあ。  

        新宿は、タバコの吸いすぎみたい。  

        六本木は、夜更かしのしすぎです。  

        銀座は、お酒の飲みすぎだなあ。  

 (1988 カナディアン航空) 

・・・これは「バブル特集」でも紹介しました。

ふつうなら、カナダの魅力で書くところなんだけど、

そうじゃない発想をするところが、いい。

 

10.婚前に交渉することは、たくさんある。  

 (1988 西武ブライダルフェア)

 

11.一冊で帰ってきてね、と妻が言った。  

           ちっちゃな本が、でかいこと言うじゃないか。  

 (1989 講談社文庫)

 

12.乾くとブスになっちゃう。  

 (1989 サッポロ飲料 Tina)  

 ・・・これなんか、完全に時代を先取ってます。

 ‘90年代は、この感じになっていくんですよ。

 

13.君のおかげで、着たり脱いだり、やめられない。  

 (1990 内外衣料SILVER OX)  

 ・・・上手だなあ、と思います。男性モノを主観で書いちゃう力。

 

14.なんであたしって、Parisに生まれなかったんだろう。  

 (1991 レナウンCMナレーション) 

 ・・・書き手ワールドからの発信です。

 彼女たちの強みは、これなんです。

 

15.あなたのヌードは、ちゃんとエッチですか。   

 (1992 マチス化粧品) 

 ・・・女性も、ちゃんとエッチなんです。

 でも、オレが書くと、エロになるかも・・・。

 

16.私が、あなたと違っていてよかった。  

 (1994 NTTデータ通信) 

 ・・・こんなイマっぽい一行、すでにこのころあったんですね。

 この発想力に、拍手です。

 

17.仕事を理由にケンカするのはよそう。  

           なんか、とんでもないことを云ってしまいそうだから。  

 (1994 第一勧業銀行)

 

18.紅葉なんてどこにでもある、と思ってました。  

           失礼しました。  

 (1994 JR東海CMナレーション) 

 ・・・17はホンネのつぶやき、18は語りかけモノローグ。

 コミュニケーションをとる距離が、とにかく近いですね。

 

19.子供っぽすぎる服は、子供らしくないね。  

 (1994 フーセンウサギLusty)

 

20.夫以外の人と、螢光灯の下で会いたくないわ。  

 (1994 持田製薬 化粧品) 

 ・・・このあたり、TCCなんかで、女性審査員がもっと多かったら、

 賞とか獲れるのにな、と思ったりします。

 

21.もぐもぐを ぽいぽいしては いけません。  

           ぷーはいいですが、ぺっはだめです。 

 (1995 東日本キヨスク マナー広告) 

 ・・・ガムのことだと、すぐにわかりますよね。

 

22.私は、男の人を、ふったことがないのです。  

           キスというものを、ここしばらく、していない。  

 (1996 尼崎総合文化センター結婚式場) 

 ・・・こんなコピー、他のひとには書けません。

 受け入れてくれるクライアントも、エライです。

 

そして、20世紀末にむけ、

最初に述べた「一般論」「客観性」とは対極をなす、

「個人の主観」「立ち位置の低さ」コピーが、百花繚乱に。

一気に、いきましょう。

 

23.脱いだらすぐ!が男です。  

 (1999 National ズボンプレッサー)

 

24.私は、戦争を知らないおばあさんになります。  

 (1999 河原町OPA)

 

25.大人は来年が好きだなあ。  

 (1999 伊東屋 手帳とカレンダー)

 

26.神様、どうかあの服が最後まで 売れてませんように。  

 (1999 天神VIVRE)

 

27.ママとわたしが、パパをつくったの。  

 (2000 VIVRE父の日)

 

28.私、誰の人生もうらやましくないわ。  

 (2000 Panasonic SINGLE STAGE)

 

 

・・・ほんとうに意味での「つよいコピーワーク」って、

こんなことじゃないのかな、と考えさせられたりもします。

クライアントのことを忖度していたら、

こんなコピーは、書けないよね。

そして、こんなに共感、得られないよね。

 

 

・・・さて、この流れは20世紀にはいって、どうなっていくのか・・・。

次回の後編、おたのしみに!


追記:
<後編はこちら。>

執筆者:岡田直也
CMは、世の中の動きとまさに連動しています。イケイケの時は
勢いがいいし、沈滞してるときはどこか内省的になったりする。
そういう意味でCM観察とは、立派な社会学・考現学といえます。
それとは対極の「神はディテールに宿り給う」。これもまた事実。
些細な演出の妙など、作り手の意志が際立つ場合も、あるのです。
そう、CMの観かたは、大所高所から重箱の隅にいたるまで無限。
ぼくらがそれを、いろんな角度から提示できれば、と思ってます。

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