Room708
名づけて「直也の部屋」。 編集長が、プロフェッショナルな立場から、広告を語り尽くします。

元旦の新聞広告ウォッチング annex

2017年01月17日
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「元旦の新聞広告」について、もうちょっと話をしたくて。


もういちど、各社の広告を眺め返してみると、

世の中一般へ、というよりも、既存の新聞読者を相手にして、

既存のコンテンツ(=具体的な書籍)をネタに、

地固めというか、囲い込みを行っているように、感じるのです。

でなくては、15段を使って一冊の書籍広告なんて、あり得ないでしょう。


とすれば、これはもっとも保守的なスタンス、なんですね。

攻めではなく、完全に守り、ということになります。


そんなことは、すぐ広告の具体的な表現にあらわれてしまう。

積極的に世の中とかかわる、これからを予測する、

そんなメッセージがはいりこむ余地は、ないんですね。

前々回、おとなしい、面白くないといったのは、そういうわけだからでしょう。


こういった、大手出版社の姿勢、かなり心配しています。

この「出版文化の危機」を、はたして乗り越えることができるのか・・・。



そうなんですよ、このぼく、というのは、

根っからの読書好きで、自宅も事務所も、本であふれかえっているし、

かつて、広告代理店のつぎに就職したかったのは、出版業界だったし、

博報堂の新人時代、ひととおりの大手出版社は担当させてもらえたし、

妻も、会社の出版営業の紹介による、出版社勤務だったし、

おまけに息子もその嫁も、出版社に勤めているし・・・。


そんな、「出版」との縁が切っても切れないからこそ、

ぼくにとっては、けっこう深刻なモンダイ、なのです。


なんとかならんかなあ。なんとかしたいけどなあ・・・。



元旦の新聞広告ウォッチング 2

2017年01月14日
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以前このコラムで述べたように、

元旦の出版広告はその昔、ひとつのトピックスでした。

夏ごろから準備を始め、競合プレ・再プレ・再々プレと、

各出版社の担当は、制作も営業も、とにかく多忙をきわめたもの。

面白いアイデアもたくさん出てきて、

それがまた(たとえボツになったものでも)、

社内で話題になったこともありましたね。

 

でもね、その熱も、今はどこへやら。

オモシロくなくなっちまいましたねえ。

企業広告・メッセージ広告というより、

全体的に「売り」に走っていますね、傾向として。

だいたい、15段使ってたった1冊の書籍広告、なんて、

もったいなさすぎやしないか・・・。

 

よく言われているように、

各出版社とも、今はタイヘンな時期のはず。

だって今後、リアル書店がなくなるかもしれないし、

新しい販売システムがweb中心に再構成されていく中で、

大手出版社といえども、情報ソースを提供する役割として、

いわば「取次」の地位に甘んじてゆくかもしれない。

(そうなった時、いちばん怖いのは「質の低下」ですね。

 売れそうな本ばかり出すようになっちゃうからね)

 

そういう、いわば「出版文化の危機」にさしかかってるときこそ、

世の中に対して、みなで考えよう、というスタンスで、

なんらかのメッセージを投げかけるべきだ、と思うんだけど。

その最大のチャンスが、

元旦の新聞210面に載る広告を駆使することだったはずです。

 

もしぼくが、広告主にプランを提供する立場だったら、

まずそのへんから、徹底的に掘りおこしてみるだろうな。

 

 

まあ、そこまでシビアに攻めずとも、もっと世の中とリンクして、

今のひとたちに響きそうなメッセージを編み出すだろうな。

そうなんだよ。メッセージ=コピーが不在、って感じがします。

コピーライターがちゃんと機能してるの? という気さえする。

 

(まあ、出版社系というのはちょっと特殊で、

 広告主もいっしょにコピー考えちゃう、ってとこがあるので、

 今年の広告は、そんな一面が前に出た、って気もします)

 

(世の中に触れてる感じがしたのは、

 光文社の「紙ってる」だけでしたね。

 これも、広告主作、の感じがつよいなあ・・・)

 

 

・・・まあ、いろいろ勝手なこと書きましたけど、

新聞広告はもっと、世の中にメッセージしようよ!

今のひとの気持ちに寄り添おうよ!

 

ぼくが言いたかったのは、そういうことなんです。

元旦の新聞広告ウォッチング 1

2017年01月11日
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今回のお話は、

ふだんあまり取り上げることのない「新聞広告」。

とくに、元旦の朝日新聞本紙に掲載された出版広告について、

ちょっと書いてみようかな。


まず2面。新潮社の全5段が載っていました。

   「世界には物語が必要だ。

    僕たちには、

    宮部みゆきがいる。」

宮部みゆきさんの次作の宣伝、という内容になっています。


次に3面には、文藝春秋の全5段。

こちらは純粋な書籍広告です。

ふだんはメッセージ広告で楽しませてくれるのに、妙におとなしい。

やはり「文春砲」なんかの影響、でしょうか。


4面は、三省堂の全5段。

   「個性があるから辞書は愉しい」

日常語として定着しそうな新語「ほぼほぼ」について、

同社3種類の辞書の記述を比較しています。


そして5面は、岩波書店全15段。

岩波文庫創刊90周年の、挨拶広告でした。


6面には、講談社の全15段が。

   「年の始めは 読みぞめ」

バカボンのパパが、「読めばいいのだ」と言っています。


7面。大修館書店の全5段。

これも、純粋な書籍広告でした。


8面。ここには小学館全15段。

   「何がめでたい」

佐藤愛子さん著の、単発の書籍広告。


10面が、集英社の全15段。

   「すき だから、書き続けられる。」

北方健三さんと、その自筆文字が主役、

企業広告の体裁をとっています。


そしてさいご、11面には光文社の全5段。

   「紙ってるひととき、今年もたっぷりと。」

4人の作家の主要作品による、これも書籍広告でした。


・・・と、並べてみたんだけれど、

  うーん、おとなしいなあ・・・。


                 (つづく)



   

岡田直也
1955年東京生まれ、札幌育ち。
現在の本拠は大阪・南堀江。
東京・大阪・札幌各コピーライター
ズクラブ会員、エンジン01文化戦略
会議会員、甲南女子大学講師。
各地に私塾を開催、若手の育成にも
力を注ぐ。また年に一度のライブに
命を燃やすミュージシャンでもある。