Room708
名づけて「直也の部屋」。 編集長が、プロフェッショナルな立場から、広告を語り尽くします。

つづけて、ボツ企画の話をします。1

2016年01月29日
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前回の「ただいま」「おかえり」ではないけれど、
成功事例より、ボツになったコピーや企画の話のほうが、
ずっと面白く、示唆に富んでいるものですね。

そんな話、すこしつづけてみようか。

今から25年くらい前のことになるのかな。ネタは「全日空」。
1970年代から当時にかけて、年中行事のように「沖縄」をめぐり、
JALとANAが、しのぎを削っていました。
ぼくが博報堂に入社する前から、あの眞木準さんが、
「トースト娘」「マックロネジア人」「高気圧ガール」などの名作を、
それはもう、連発していたものでした。
この「航空競争」に、当時もうひとつ、
資生堂とカネボウによる、「シーズンキャンペーン」が加わると、
キャンペーンガールやタイアップ曲の話題性もふくめ、
その2つだけでも、広告シーンは、いまの何倍も盛り上がってたもんです。

ぼくも3~4年ほど、この「沖縄」を担当させてもらいましたが、
ある年、夏のキャンペーンのキャッチフレーズを考えていて、
これだ!というのにたどり着きました。

それは、「空海、最澄。」というもの。

言うまでもなく、弘法大師と伝教大師、ですね。
だれもが知っている、名僧たちです。
この二人を並べると、あらフシギ、沖縄のコピーになっちゃう!
つまり、「空と海が、最も澄んでいる」。
それは、沖縄に他ならない、というわけです。
できた!と膝を打ちました。
当時はこういう、字面のオモシロさにのめりこんでいた時期だったから。
(今だったら、こんな判じ物みたいなものは書かないけどね)

そこで、社内をまず説得し、外部スタッフを集めました。
まず、ADはぜひ浅葉克己さんにと思い、交渉成立。
演出には川崎徹さん、カメラは操上和美さん、
スタイリストは北村道子さんと、
生意気にも、すごい面々と仕事をすることになったのです。
たしかこの時は、競合ではなかった。
この「空海、最澄」案で押し切って、得意先を説得しちゃいました。

ただ、ぼくには一抹の不安要素があったんです。

これだけ著名な二人の高僧の名前を、
そもそも広告に出してもいいものなんだろうか、と。
(だったら、そんなもん企画するな、ってことなんだけど・・・笑)
そこで、東大の仏教研究の権威のところに、
それこそ菓子折持って、伺ったんです。
非礼なことに、その方のお名前も忘れてしまいましたが。
そうしたらその教授、ニコニコしながらおっしゃった。
「仏教は、宗派同士とても仲がいいんです。むしろこの2つにとっても、
(もちろん、真言宗と天台宗)開祖さまの名を出すことで、
宣伝になって、いいのではないでしょうか」
ということで、予想以上のお墨付きがいただけました。

それで胸を張って、制作作業に取りかかることができました。

ところが、です!
                        (つづく)
岡田直也
1955年東京生まれ、札幌育ち。
現在の本拠は大阪・南堀江。
東京・大阪・札幌各コピーライター
ズクラブ会員、エンジン01文化戦略
会議会員、甲南女子大学講師。
各地に私塾を開催、若手の育成にも
力を注ぐ。また年に一度のライブに
命を燃やすミュージシャンでもある。