Room708
名づけて「直也の部屋」。 編集長が、プロフェッショナルな立場から、広告を語り尽くします。

「タバコCM」の、話をします。 2

2016/02/22

さて、周到な準備を経て、いよいよロケ本番に突入です。

ぼく自身、代理店の制作スタッフとして、同行することになりました。


オーストラリアというのはかつて、ロケのメッカでした。

冬に夏のものを撮るにはうってつけだし、機密保持の面でも、国内より環境はずっといい。

また時差がないことも手伝って、撮影隊は、さかんに出かけていったもんです。

あと、タイもそうだったな。ここは風景が、日本とよく似ていたりするので。

それから、どちらの国も、現地スタッフが優秀なんですね。

実際に行ってみて、それはよくわかりました。


まずシドニーに入り、そこから小型飛行機で、ポートオーガスタへ。

そして車で西へ向かってひた走り、グレートヴィクトリア砂漠へと繰り出して数時間、

荒野のただ中のモーテルに、投宿したのでした。

いやいや、まわりはすごい荒涼とした風景でしたね。

あちこちに動物の頭蓋骨がころがってるし。

はるか遠くに、エミューと思われる影を見ることもあったし。

そんなところに、まっすぐな線路が、地表をスパッと区切っている。そんな感じです。


宿からほど近く、その線路のわきにベースを構え、撮影は香盤どおり行われました。

長い編成の列車が、ゆっくりだけど重厚な音を立てて、線路をやってくる。

羊の群れと大勢のエキストラと、日豪入り乱れてのスタッフと。

現場はほんと、すごいことになってました。メイキング撮っとけばよかったなあ・・・。


モーテルに戻れば、夕食が待っています。それがまた、思い出深いものでした。

なにしろ、ビーフ、マトンそしてカンガルー肉のローテーション、なんですから。

2週間近く滞在したと思うけれど、肉好きには美味かったですよ。ちょっと飽きるけど。


ところが、です。

撮影もさいごのほうになって、右の耳がだんだん痛くなってきたんです。

奥歯を嚙み合わせると、もっと痛い。そればかりか、耳道がふさがるように腫れ、熱も。

苦しみながら固いカンガルー肉をなんとか食べ、さあ明日はシドニーだ、

とにかく日本にもどるまでガマンしよう、って必死でした。

だって、海外で医者にかかるなんてヤだ。この一念でしたね。

でもね、ポートオーガスタからシドニーまでの飛行機が、死ぬ思いでしたよ。

離陸と着陸時、耳がこわれそうになる。

気圧の急激な変化に、たぶん耐えられなかったんだと思います。

それでもなんとかシドニーに戻り、最終日は港のレストランで打ち上げ、ということに。

ロブスター尽くしの豪華料理だったんですけど、結局ほとんど食べられず。

味もなにも、憶えていません。


そんなこんなで、なんとか日本に戻って、医者に直行。

そしたら、重い外耳炎、ということでした。1時間くらい点滴受けましたよ。



あ、なんか、ぼくの耳の話にすり替わってしまったけれど、

結果、ロケは成功裏に終了しました。

でもね、いろんなことがあったんですよ。ぼくのトラブルなんか、吹けば飛ぶようなもん。

突発的な事故や、予測できない問題は、必ずついてまわります。

そういうときのために、代理店がアテンドするわけで。

いやあ、ぼくといえば、自分のトラブルを口実に、

現場でちゃんと機能していなかったんだろう、と思います。

いま考えても、反省しきりです・・・。。








岡田直也
1955年東京生まれ、札幌育ち。
現在の本拠は大阪・南堀江。
東京・大阪・札幌各コピーライター
ズクラブ会員、エンジン01文化戦略
会議会員、甲南女子大学講師。
各地に私塾を開催、若手の育成にも
力を注ぐ。また年に一度のライブに
命を燃やすミュージシャンでもある。