Room708
名づけて「直也の部屋」。 編集長が、プロフェッショナルな立場から、広告を語り尽くします。

「アルコール濃度」調節! 2

2016年04月04日
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そこで、またひとつ過去のプレゼンを、思い出したぞ。

「アルコール濃度」つながりでね。


これも20年くらい前のこと。

「サントリーブランデー」のCMを、自主プレゼンしたことがあったんです。

というか、会社に「やらされた」というほうが、実情に近いかな。

パートナーのADは、米村浩くんでした。


ブランデーは、濃度的にはかなり強い酒。40度ありますから。

それで、ぼくはといえば、その「強さ」をどうにかして表現したかった。

だって、ブランデーってのは、ストレートで飲むのが、いちばんおいしいのだから。

水割りにすると、あの芳醇な香りが消えてしまうんですよ。

(まあ、かなりの「酒飲み目線」ですけれど)


いまも昔も、「酔い」を表現することは、酒のCMとしてはとうぜん、タブーなわけです。

でも、そのタブーに挑戦したかった。

「アルコール濃度」調節の目盛りを、振りきってみたかったんです。

それで、こんなキャッチフレーズを考えました。


    舞 乱 泥


ブランデーを味わうことによって、舞い、乱れ、泥(泥酔、あるいは泥のように眠る)となる。

これは、酔いの究極です。すげえ、と自画自賛。ハタと膝を打ったんですね。

通りっこない、とハナから思ってはいたのですが、2案め、3案めならいいか、ということになり、

コンテを作ることになりました。

(ちなみに、1案めが何だったのか、とんと憶えてません)


また米村くんが、いい絵を考えてくれたんです。こんな感じだったでしょうか。


ひとりの男が、自室で静かにブランデーグラスを傾けている。

(プレゼン上、ここは贅沢に、ウディ・アレンの起用を想定しましたっけ)

するとカメラが、彼の斜め上方のシャンデリアに寄っていく。

これ、じつは、シャンデリアではなかった。「蝶の群れ」だったんです。

その群れが、いっせいに飛び立つ。フワッとシャンデリアの形がくずれ、あとは空となる・・・。


うまく想像できましたか? めちゃくちゃキレイな映像になりそうでしょ?

そう、米村くんがぼくの意図をくんで、ビジュアルでも「究極」を表現してくれたんです。


プレゼンの結果は、当然アウト。そりゃあ、ムリだわ。

酔いによる幻覚、の表現だものね。コピーもビジュアルも、強すぎ。完全レッドゾーン。

まあこの企画、ぼくのキャリアのなかで、「最強」なのはどうも間違いないところですが。


たしかそのあと、ウイスキー水割りの缶を出す、というふうに路線が変わり、

そちらの企画も、中島信也さんを加えていくつか提案したんだけど、

結局は他代理店のものが残って商品化、CM化される、という運びになりました。


それが、「冷選洋酒」というもの。いまでもあるのかどうか(見かけなくなったけどな)。

表現は、加藤茶さんがあのヅラをかぶり、三浦友和さんとシリアスな芝居を、というものでした。

波平・マスオの実写版として、当時ちょっと話題になりましたね。



・・・そう。「アルコール濃度」調節。

そんな観点で酒のCMを見てみるのも、オモシロイんじゃないかな。

タブーには触れていないにせよ、強い酒はそれなりの表現世界を持っていますから。


ああ、でも「舞 乱 泥」、いつかどっかで、やりたいなあ・・・。

岡田直也
1955年東京生まれ、札幌育ち。
現在の本拠は大阪・南堀江。
東京・大阪・札幌各コピーライター
ズクラブ会員、エンジン01文化戦略
会議会員、甲南女子大学講師。
各地に私塾を開催、若手の育成にも
力を注ぐ。また年に一度のライブに
命を燃やすミュージシャンでもある。