Room708
名づけて「直也の部屋」。 編集長が、プロフェッショナルな立場から、広告を語り尽くします。

CM音楽の、おはなし 1

2016年06月03日
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さて、ここでまた話題を転じ、

CMに使用する「音楽」について、書いてみようかな。

 

制作の過程で、CM音楽というものは基本的に、

演出家が決めているケースが多いんじゃないかな、と思います。

なので、音楽ありきの企画でないかぎり、ぼくら代理店の人間(もちろん、当時)、

とくにコピーライターにはあまり関われないところ、なんですね。

 

そこで、こんな話。

かつてはいわゆる「レコタイ」(レコード大賞じゃないよ)が盛んでした。

つまり、新しい曲を書きおろし、発売と同時にCMもオンエア、というやつ。

既存曲はとにかく、なん重にも金かかりますからね。

ひところのJALや全日空、資生堂やカネボウあたりなんて、

毎回毎回、ガチののレコタイ合戦、でしたねえ、ほんとうに。

いまでもこの手法、ドラマタイアップでなら、ときどき見られますね。

 

さっき、ぼくは音楽になかなか関われなかった、って言いましたが、

この「レコタイ」がらみでなら、ぼくもなん回か、

ミュージシャン本人も交えた打ち合わせに、出たことがあるんです。

その代表的なケースを、2つほど。

 

まずは1993年、当時担当していたMaxellのカセットテープのCM+山下達郎。

商品特長として、「音の粒だちがいい」みたいなことが前提としてあるので、

それに基づいたキーワードをいくつか用意したうえで、

達郎氏に作詞・作曲を依頼しにいったのでした。

ようは、そういうキーワードで商品と歌をリンクさせることが、

広告主にとって必要、だったんです。

結果、達郎氏は、ぼくの持っていった「ピンポイント」なる言葉を歌詞に生かし、

タイトルをMAGIC TOUCHとして曲を上げてくれた。

まあ、ぼくが彼にインスピレーションを与えられたかどうかはわからないけど、

その昔、シュガーベイブのころからのファンだったぼくにとっては、

彼に会えただけでも、じゅうぶんうれしかった、のでした。

 

ふたつめは2000年、大日本除虫菊「金鳥の夏、日本の夏」+石川さゆり。

このケースでは、歌詞が先行していました。

「夏の女」をテーマに、作詞家から上がってきた第一稿をもとにして、

作曲・編曲、そして石川さゆり本人出演によるCM企画を打ち合わせる、

そんなオールスタッフ会議が、彼女の事務所で開かれたのです。

もうこの頃になると、ぼくもさゆりさんや作曲家を前にして、

ずいぶんいろいろな発言をした憶えがありますね。

でも、勝手なことばかりだったかも。「姫神」みたいなのがいいとか・・・。

まあ、最終的には、いい曲ができた、と確信することができたし、

歌のタイトル「夏の夜の夢」にぴったりな演出コンテを、

あの繰紙上和美さんが描いてくれて、すべてがうまくいきましたね。

誰でも知ってるCMシリーズのうちの一作にぼくが携わった、ということが、

なんともうれしく、鼻が高い気分、でしたね。

 

それよりなにより、その打ち合わせの場で、

石川さゆりさんの「ナマ歌」「ナマこぶし」が聴けた!

こいつは、なかなか体験できることじゃない。

じつに、よかったですよ。


               (つづく)

岡田直也
1955年東京生まれ、札幌育ち。
現在の本拠は大阪・南堀江。
東京・大阪・札幌各コピーライター
ズクラブ会員、エンジン01文化戦略
会議会員、甲南女子大学講師。
各地に私塾を開催、若手の育成にも
力を注ぐ。また年に一度のライブに
命を燃やすミュージシャンでもある。