Room708
名づけて「直也の部屋」。 編集長が、プロフェッショナルな立場から、広告を語り尽くします。

カンヌCMフェスティバル! 2

2016年06月27日
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なんか、遊びのハナシばっかりになってしまったけど、

肝心のCM映写のほうだって、ちょっとは観て勉強したのですよ。


すごく印象に残っているのは、サントリーローヤルの「マーラー・大地の歌」。

これ、日本でもオンエアされていて、すでに話題にはなっていました。

マーラーの交響曲「大地の歌」は、盛唐の漢詩のドイツ語訳がテキスト。

酔いの世界に遊ぶような、中国風(和風にも見えるけど)アニメーションに、

フルオーケストラとテノールによる「春に酔える者」(だったかな)をのせる構成。

で、さいごのタグラインは、「ウィスキーにかさなる音楽。」でした。よく憶えています。


これが、カンヌの会場で流されたことじたい、ちょっとうれしい気分になったのだけれど、

驚いたことに、そのタグラインの英訳がスーパーで入るや、

会場から、割れんばかりの拍手がおこったのです。

どんな訳だったかなんて、まるで記憶にないんだけどね。


つまり、この「タグライン」によるCMの収めかたというのが、国際標準、なんですね。

それまで展開されてきた映像世界を、キュッと商品なり企業に落としこむ。

その一行による収斂があるから、映像世界は「飛べる」のです。


そういう作りかた、日本ではかならずしも一般的ではない。今だに、そうなんだと思います。

ところが海外のCMでは、完全に主流派です。

現在でも、CMにおけるコピーワークといえば、世界ではタグラインのことをさす、のではないでしょうか。


その「タグライン」の存在と、その大切さを、

あの「拍手」から感じとることができたのはよかったんだけど、

じゃあそれを日本でやってみよう、と思っても、まったく不可能だったんです。

15秒CMで、そんなこと、できるわけないじゃん! いや、ほんとにそうなんですよね。

この、日本でガラパゴス的に発達した、15秒の世界では、商品名叫ぶだけで終わっちゃう。

くだんのサントリーのCMだって、応募されていたのは、60秒バージョンでしたから。


なので逆に、日本の特殊なCMづくり環境を、思い知らされることになった、というわけです。


でもね、そうやって考えていくと、あの有名な日清カップヌードル「hungry??」はスゴイよなあ。

後にも先にも、あんなに評価された日本のCMは、絶無ですからね。

構造的に見ていくと、終わりちかくの「hungry?」は、みごとなタグライン。

人類共通の永遠のテーマ「食」に想いを馳せる。そんな自分がいることに、気づかされます。

もちろん、緻密な映像設計など、いいところはたくさんあるんだけど、

なにより、そんな国際標準にかなったつくりだったことが、評価の原動力、だったんでしょう。



そうなんです。カンヌに行って、世界のCMを観て、

ああ、いいなあ、とは思ったんだけど、

日本に帰って、ついぞ世界標準のCMなんて、作れなかった・・・。

これ、多くの制作者に共通の、ちょっとした「痛み」なのでは、ないかなあ・・・。





岡田直也
1955年東京生まれ、札幌育ち。
現在の本拠は大阪・南堀江。
東京・大阪・札幌各コピーライター
ズクラブ会員、エンジン01文化戦略
会議会員、甲南女子大学講師。
各地に私塾を開催、若手の育成にも
力を注ぐ。また年に一度のライブに
命を燃やすミュージシャンでもある。